【23.歴史は繰り返す】
「歴史は繰り返す。先ず悲劇として、次は茶番として。」カール・マルクス
"History repeats itself, first as tragedy, second as farce." Karl Marx
この有名な一節は、マルクスの「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」の冒頭に出てくる。"farce"とは「笑劇」のことであり、茶番とも喜劇とも訳されるが、一方"comedy"が主として「喜劇」と訳される。
つまり、師でもあったヘーゲルの言葉を引き合いに出して、一回目の「悲劇」は、ヨーロッパ大陸を制覇した「ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン一世)」を指し、二度目はブリュメールのクーデターで帝位に就いた甥の「ルイ・ナポレオン(ナポレオン三世)」を指している。
「悲劇(トラジィディ)」に対する「喜劇(コメディ)」ではなく、矮小化された「お笑い種(ファルス)」として繰り返されたにすぎぬと冷笑するために言及されたものだ。
「ファルス」は悲劇の幕間などに挿入される道化劇であって、ストリップの合間を埋めるコントみたいなもんだ。独立して演じられる「コメディ(喜劇)」とは別ジャンルの茶番劇。日本語では、この辺の伝統劇に基づくコメディという概念が無いから、曖昧に使われることが多い。
なお、この「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」は、1848年の二月革命に始まるフランス「第二共和政」における諸階級の政治闘争が、結果として、ルイ・ナポレオンのクーデターを成功させ、フランス皇帝ナポレオン3世として「第二帝政」を成立させた過程について分析した評論である。
ルイの第二帝政は、わずか3年9カ月という短命でその歴史を閉じた。マルクスは、フランスの革命と反革命の展開を考察し、フランス第二帝政の成立という歴史的事実に沿って、「唯物史観」に基づいて歴史的原因を解明した。この叙述の中で、「ボナパルティズム」という言葉が歴史的用語として定着した。
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