2022年7月5日火曜日

【歴史コラム】23.歴史は繰り返す

【23.歴史は繰り返す】


「歴史は繰り返す。先ず悲劇として、次は茶番として。」カール・マルクス
 "History repeats itself, first as tragedy, second as farce." Karl Marx

 この有名な一節は、マルクスの「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」の冒頭に出てくる。"farce"とは「笑劇」のことであり、茶番とも喜劇とも訳されるが、一方"comedy"が主として「喜劇」と訳される。

 「ヘーゲルはどこかで、すべての偉大な世界史的な事実と世界史的人物はいわば二度現れる、と述べている。彼はこう付け加えるのを忘れた。一度目は偉大な悲劇として、二度目はみじめな笑劇として」

 つまり、師でもあったヘーゲルの言葉を引き合いに出して、一回目の「悲劇」は、ヨーロッパ大陸を制覇した「ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン一世)」を指し、二度目はブリュメールのクーデターで帝位に就いた甥の「ルイ・ナポレオン(ナポレオン三世)」を指している。

 ルイの事績は、狭義の「ボナパルティズム」の語源となったように、叔父大ナポレオンの事績には比肩しようもなく、浮動勢力のバランスの隙間に咲いたアダ花のような卑小なものとされる。

 「悲劇(トラジィディ)」に対する「喜劇(コメディ)」ではなく、矮小化された「お笑い種(ファルス)」として繰り返されたにすぎぬと冷笑するために言及されたものだ。

 「ファルス」は悲劇の幕間などに挿入される道化劇であって、ストリップの合間を埋めるコントみたいなもんだ。独立して演じられる「コメディ(喜劇)」とは別ジャンルの茶番劇。日本語では、この辺の伝統劇に基づくコメディという概念が無いから、曖昧に使われることが多い。

 なお、この「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」は、1848年の二月革命に始まるフランス「第二共和政」における諸階級の政治闘争が、結果として、ルイ・ナポレオンのクーデターを成功させ、フランス皇帝ナポレオン3世として「第二帝政」を成立させた過程について分析した評論である。

 ルイの第二帝政は、わずか3年9カ月という短命でその歴史を閉じた。マルクスは、フランスの革命と反革命の展開を考察し、フランス第二帝政の成立という歴史的事実に沿って、「唯物史観」に基づいて歴史的原因を解明した。この叙述の中で、「ボナパルティズム」という言葉が歴史的用語として定着した。

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