2022年7月3日日曜日

【歴史コラム】21.「イエスの方舟」とは何だったのか?

【21.「イエスの方舟」とは何だったのか?】


 1月27日放送「爆報!THE フライデー」(TBS系)で、『「カルト教団」として話題になった「イエスの方舟」の現在が明らかに』というタイトルで、宗教団体「イエスの方舟」の騒ぎから37年後の現在が報道された。
 「イエスの方舟」事件とは、1970年代後半、千石剛賢(千石イエス/マスコミが名付けた呼称で、当人は一度もイエスと名乗っていない)のもとで、若い独身女性らが共同生活を送るようになり、その家族らが「イエスの方舟」に対して娘を返せとせまり、婦人雑誌などに告発すると、他のマスコミもこぞって「カルト教団」として騒ぎをあおった。事の顛末は、下記のWikipediaに詳しいが、結局、主宰者千石イエスと教団とは、容疑事実なしと不起訴となり、娘たちも家族のもとに帰された。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%96%B9%E8%88%9F%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 「聖書勉強会」という趣旨で集まった20数名の団体で、宗教法人でもない小さな共同生活グループが、これほどセンセーショナルに騒がれた要因をまとめてみると、

・当時、アメリカの新興宗教団体の集団自殺事件が報道された直後であり、狂信的な「カルト教団」というイメージが強調されたこと。
・若い独身女性たちが、さほど不自由とは思えない家庭・家族を捨てて家出し、千石イエスのもとで共同生活を送るという、世間的には異様とも思える状況。
・若くてきれいな独身女性ばかりを集めた「千石イエスのハーレム」、などというような刺激的な表現でマスコミがあおったこと。
・騒ぎが大きくなると、千石は会員とともに失踪し、二年以上も所在不明のまま全国を転々としたことで、集団失踪・誘拐事件などとして国会でも取り上げられるようになったこと。
・事件鎮静後も、千石が活動を再開すると、自宅に帰された女性信者たちは再び彼のもとに集まり、同じように聖書勉強会として共同生活を再開したこと。
・活動再開後には、福岡の中洲で「シオンの娘」という酒を提供するクラブを始め、女性会員はそこでホステスとして働き、会の運営費用や共同生活費用などを稼ぎ出したこと。

 サンデー毎日が冷静な調査記事を書き、事件も不起訴に終わると、マスコミ報道も沈静化し、のちに千石は、福岡県古賀市に教会兼自宅「イエスの方舟会堂」を建設し、会員との共同生活を続け、2001年に死亡した。その間、いくつかの検証記事が書かれ、テレビドラマ化されるなどして、イエスの方舟の復権は為されたが、最初に振りまかれたカルト教団のイメージは、今でも世間に残されたままであると思われる。

 今回の「爆報!THE フライデー」での報道も、エンタメ系ドキュメンタリーであって、深堀されたニュースではなかった。それでも、37年ぶりに初めてマスコミに応じるという代表者の故千石の妻や、当時からの共同生活を続ける会員へのインタビューが映し出され、共同生活の様子も直接カメラが入って報じられた。

 カルトにみられるマインドコントロールや、強制的な入信と隔離、財産などの強制的な詐取などは、いっさい確認されていない。少なくとも、事件から37年も経過し、千石本人も亡くなった現在でも、当時からの会員が充足した共同生活を営み、周辺ともトラブルを起こさず静かに「聖書勉強会」続けていることは、カルト教団でも反社会的集団でもないことを示している。それにしても、40年もの間、信念をもって生活を続ける彼女たちの心の内は、我ら凡人には計り知れない部分をも残している。

 なお、この事件の過熱報道がトラウマになったのか、その後に起こった「オウム真理教」事件では、腰の引けたマスコミの対応が、オウムを増長させたという反省もなされている。

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