2021年1月28日木曜日

【21C_h3 2015(h27)年】

【21th Century Chronicle 2015(h27)年】


◎大阪都構想

*2015.5.17/ 大阪都構想の賛否を問う住民投票は、僅差で否決される。


 「大阪都構想」は、大阪で検討されている統治機構改革の構想で、大阪府と大阪市の統治機構(行政制度)を、現在の東京都が採用しているような「都区制度」に変更するという構想である。とりわけ、大阪市を廃止し複数の「特別区」に分割すると同時に、それまで大阪市が所持していた種々の財源・行政権を大阪府に譲渡し、残された財源・行政権を複数の「特別区」に分割する、ということが記載された「特別区設置協定書」に沿った統治機構(行政制度)改革を大阪都構想と呼ぶことが一般的に多い。

 ただし、大阪市の特別区設置が住民投票で可決された場合、隣接する周辺市も議会の承認のみで特別区に移行できるため、これら周辺市の特別区設置を含めて大阪都構想と呼ぶ場合もある。また、同構想の結果できる広域地方公共団体は、現在の法制度下では「大阪都」という名称になることはなく(国の法律改正が必要)、大阪府のままであり、「大阪府と大阪市を統合する」という枠組みという点から、「大阪府・大阪市合併」または「府市統合」ということもある。


 大阪府・市の統合問題は戦後早期から議論され、1953(s28)年の大阪府議会「大阪産業都建設に関する決議」で、大阪府・市を廃止して大阪都を設置し、市内に都市区を設置するとされた。これは1947(s22)年から大阪市側が展開していた特別市運動に対する大阪府側の対案であったが、自然に立ち消えた。

 また、1967(s42)年10月、左藤義詮大阪府知事が「大阪府を、府市併せて20区に統合する」という腹案を示したが、一方の中馬馨大阪市長は、「政令市大阪市を拡張して府下全部を大阪市域にする」として対立、それ以上は進展しなかった。


 また2000(h12)年頃、太田房江大阪府知事が、大阪府と大阪市の統合を掲げた大阪新都構想を唱えたが、これに対して磯村隆文大阪市長が、大阪府から独立した「スーパー指定都市(特別市)」を主張し対立した経緯があった。これらの構想も具体化まで進展せず消滅した。

 2008(h20)年1月27日の大阪府知事選挙で、弁護士でタレントの橋下徹が当選して大阪府知事に就任したが、当初は、府から市町村への権限移譲を進めていく考えで、広域行政に関しては、道州制の「関西州構想」を想定していた。


 しかし道州制の議論が一向に進展しないなか、府知事としての行政改革を進めるうちに、府と市の行政一元化の必要性を切実に感じ、具体的な「大阪都構想」を実現するために、2010(h22)年4月、地域政党「大阪維新の会」を結党し、大阪都構想を党の第一目標とした。

 これまで府市一元化が進まなかったのは、大阪府と大阪市の首長が、それぞれ利害の対立を前面に打ち出して選挙対策にしたことが、大きな原因とみられた。すると、平松邦夫大阪市長の任期満了に伴う大阪市長選挙に、橋下徹は3ヵ月の任期を残していた大阪府知事を辞任し、大阪市長選挙に鞍替え出馬をすることを表明し、府知事選には幹事長の松井一郎が立ち、大阪市長・大阪府知事ダブル選挙となった。


 2011(h23)年11月27日のダブル選挙では、大阪市長は橋下徹、大阪知事には大阪維新の会幹事長の松井一郎が圧勝して当選する。一方で国政では、2012(h24)年8月「大都市地域特別区設置法」が可決され、「特別区の設置」が「都(東京都)」以外でも可能となった。

 大都市地域特別区設置法に基づき、法定協議会が設置され、2014(h26)年7月に同構想の設計書に当たる「特別区設置協定書」が作成されたが、2014(h26)年10月、協定書は大阪府議会・大阪市議会にて否決された。しかし、その後、公明党が、住民投票の実施を了承したため、翌年3月に、大阪市議会・大阪府議会双方で可決・承認された。


 こうして2015(h27)年、政令指定都市の廃止を問う全国初の住民投票が行われることになった。住民投票の対象は大阪市内住民で、有権者は約211万人、2015(h27)年5月17日の投票日と決定した。だが即日開票の結果、わずか1万票、0.8ポイントの僅差で否決となり、廃案となった。

 その後の流れは現在進行中なので概略だけ記すと、橋下徹が政界引退したあと、2015(h27)年11月の大阪府知事・市長ダブル選挙で、大阪維新の会の松井一郎・吉村洋文が大差で当選、都構想が再び議論されることとなり、2019年4月、松井知事と吉村市長が知事・市長を入れ替える「出直しクロス選」を実施し、「松井市長」「吉村知事」が誕生した。さらに公明党が都構想賛成に転換し、「2020年11月1日」に2度目の住民投票が実施される見通しとなっている。

(追記 2度目も僅差で否決された) 


◎マイナンバー法

*2015.10.5/ マイナンバー法施行


 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」は、2013(h25)年5月24日、国会で可決され、2015(h27)年10月5日より施行された。国民一人一人に番号(個人番号)を割り振り(マイナンバー)、納税実績や年金など社会保障の情報を一元的に管理する制度として構想されている。

 総務省の「マイナンバー制度」のwebによると、「マイナンバー制度は行政の効率化、国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現のための社会基盤です」と書かれている。マイナンバーには「個人番号」と「法人番号」とがあるが、ここでは主として個人番号について述べる。

https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/01.html


  マイナンバーは、住民票を有するすべての人に番号を付し、複数の行政機関等において同一人物の情報を紐付けしたうえで、相互に活用(情報連携)しようとするものだとされる。マイナンバーには、「基本4情報」(氏名・住所・性別・生年月日)が関連付けられている。

  戸籍という家族集団単位で国民を登録する制度があるが、個人を登録する制度は、1967(s42)年7月に公布された住民基本台帳法(住基法)がある。すべての国民に「住民票コード」が割り振られ、市区町村レベルで管理されている住民台帳から、「基本4情報」が都道府県、さらに国の地方自治センターに吸い上げられる仕組み。


 結局、基本4情報だけしか関連付けられず、活用も行政機関の端末からのみとされたため、一般国民にとっての利便性といえば、パスポートなどの申請に住民票を提出する代わりに住基ネットの利用で済むといった、行政レベルに限定された。私自身たった一度だけ、老齢年金の受給申請時に、住民票コードが必要と言われただけの経験しかない。しかも自分の住民票コードを知らなかったため、えざわざ住民票コード付き住民票を役所でとるはめになった。

 しかもほとんど使われた経験も無いまま、十数年で「マイナンバー制度」に置き換えられるという。二千数百億かけたシステムが、三千億の新システムに置き換えられる。しかし 、住基ネットが番号制度を支える基盤となるとされ、データベースとしてはそのまま残存され、11桁の「住民票コード」に12桁の「マイナンバー」が一対一で連動して上乗せされるだけだという。


 つまり、「住基ネット」は「市区町村のサーバー(住民台帳と連動) >  都道府県サーバー >  国の全国サーバー」というピラミッド型に構成されていたのだが、「マイナンバー制度」では、「情報提供ネットワークシステム」が、基本情報を保存している住基ネットの既存サーバーのデータベースなどから、必要なデータごとにコードを結びつけてアウトプットする仕組みらしい。つまりデータは分散管理されていて安全だというわけだ。

 そしてまず「国民の利便性の向上」という点では、各種社会保険・免許証・入出国管理・市区町村役場事務・税務署などが関係づけられると、オンラインで手続きが完了できたり、さらに民間の銀行口座・クレジット・携帯プリペイドなどが連動させることも可能で、マイナンバーカード一枚ですべて済ませることも可能なわけだ。


  次に「行政の効率化」では、国や地方公共団体の間で情報連携が始まると、住民票の転出・転入手続きが一ヵ所でできたり、行政サイドでも、情報の照合・転記等に要する時間・労力が大幅に削減されることになる。

 最後に、「公平・公正な社会の実現」だが、行政サイドが最も狙いとしているのは、国民の所得状況等の把握で、税や社会保障の負担を不当に免れることや不正受給の防止を目指す。しかしこれは国民の抵抗で、おいそれとは実現しない。しかし、所得が一元化され、銀行口座等とリンクしていれば、一律給付金などは即座に振り込まれ、また所得条件付きの給付やサービスも、対象者が自動的に絞り込めるので、即時の対応が可能になる。


 つまるところ、個人情報の管理や情報流出の危険を、国民が忌避する限り、サービスや利便性も進まない。たとえば、納税は国民の義務であり、正確な課税情報に基づき公正に課税されるべきだが、給与所得者のみが源泉徴収で100%把握されるのに、事業所得者や農業従事者は、十・五・三と俗に言われるような捕捉率であるとされる。

 その他、個人情報に関しても、マスコミがやたら騒ぎ立てて煽るが、遺漏して困る情報とどうでもよい情報を、各自が真に分別しているかは疑問である。適切なサービスを受けるためには、国民が必要な情報は提供するという考え方が、より暮らし良い社会を作り出すはずである。


(この年の出来事)

*2015.1.27/ 名古屋で、女子大学生が殺人の容疑で逮捕される。

*2015.3.13/ 東洋ゴム工業が、免震装置の性能試験データを改ざんしていたことが発覚する。

*2015.8.13/ 大阪寝屋川市で、中1男女生徒が殺害される事件が起きる。

*2015.11.13/ パリ同時多発テロで130人が死亡する。


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