2021年1月29日金曜日

【21C_h3 2016(h28)年】

【21th Century Chronicle 2016(h28)年】


◎伊勢志摩サミット

*2016.5.26/ 伊勢志摩サミットが開催される。

*2016.5.27/ オバマ大統領 がサミット後に広島を訪問する。


 第42回先進国首脳会議、通称伊勢志摩サミットは、2016(h28)年5月26日から5月27日にかけて、三重県志摩市阿児町神明賢島で開催された。志摩市が選定された理由として、会場となる賢島が風光明媚なこともさることながら、四方を水に囲まれた狭隘な島であり、人の出入制限が容易なことなどから、警備面をも考慮して選定された。

 出席者は、G7のリーダーである各国の首脳および欧州連合の代表者で、日本/安倍晋三内閣総理大臣、フランス/フランソワ・オランド共和国大統領、アメリカ/バラク・オバマ大統領、イギリス/デーヴィッド・キャメロン首相、ドイツ/アンゲラ・メルケル 連邦首相、イタリア/マッテオ・レンツィ閣僚評議会議長、カナダ/ジャスティン・トルドー首相、欧州連合/ジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長/ドナルド・トゥスク理事会議長。

 G7先進国首脳会議も40回を超え、近年は中国やインドなどの新興国の急速な経済的発展と、その反面G7の経済力と影響力の相対的低下に伴い、各国首脳の儀礼的友好的会合の側面が強くなっており、世界経済の具体的事項に関しては、G7にEUとロシアおよび新興経済国11ヵ国を加えたG20の枠組みで議論される事が多くなっている。しかも今回は、政権末期を迎えた首脳が多く、米・仏・英・伊の首脳は一年以内に代わっているので、中身の薄い会議となった模様である。

 外務省による公式発表では、「世界経済・貿易」「政治・外交問題」「気候変動・エネルギー」「開発」「質の高いインフラ投資」「保健」「女性」について議論するとされたが、具体的には「北朝鮮核問題」と「感染症対策」が主要議題として扱われ、「世界経済」についても話し合われることなった。


 北朝鮮核問題は、2016(h28)年に強行された北朝鮮の核実験とミサイル発射を受けたもので、くわえてウクライナや中東問題、国際テロ組織や難民問題についても議論された。感染症対策は、2014(h26)年の西アフリカエボラ出血熱流行やラテンアメリカを中心としたジカ熱の世界的流行を受けたもので、日本のリーダーシップの発揮が期待された。

  報道は、議題そのものより、各国首脳とファーストレディらの公式日程および非公式の行動が多く取り上げられた。公式行事では、神道の聖地である伊勢神宮の御垣内参拝と、伊勢神宮内での記念植樹が行われ、各国の首脳からは、日本独自の時間を刻んできた「伊勢神宮」という「聖地」への賞賛の声が伝えられた。


 G7の行事以外では、会議終了後の2016(h28)年5月27日、バラク・オバマ 合衆国大統領がキャロライン・ケネディ駐日大使などを伴い、広島平和記念公園を訪問し、広島平和記念資料館を視察後、慰霊碑に献花し、「核兵器のない世界」に向けた所感を述べた。原爆投下のアメリカ大統領が原爆慰霊碑を訪れるのは初めてであるが、この年で政権を降りるオバマだからこそ可能になったのだろう。


◎英国 EU離脱(Brexit)

*2016.6.23/ 英国の国民投票で、EU離脱が過半数をしめる。


 2016年6月23日、イギリスで、欧州連合(EU)を離脱すべきかどうかを決めるための国民投票が実施された。残留派の保守党のデビッド・キャメロン首相は、自信をもって国民投票を実施したが、意に反して離脱支持側が僅差で勝利するという結果となった。ほとんど誰もが本気で考えていなかったEU離脱が現実となり、イギリス世論は大混乱を引き起こす。

 「EU(欧州連合)」は、1993年11月のマーストリヒト条約(欧州連合条約)によって成立した。EUは、それまでの「EC(欧州諸共同体)」の加盟12ヵ国で始まったが、その後の条約改正とともに、加盟国は27ヵ国に増加していた。


  EUの歴史は、1951年のパリ条約によって設立された「ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)」にまで遡る。石炭と鉄鋼の奪い合いが第2次大戦の主原因になった西独と仏に、伊とベネルクス3ヵ国が加わって6ヵ国で成立した。

 1957年には参加国間でローマ条約が署名され、「EEC(欧州経済共同体)」と「EAEC(欧州原子力共同体)」が設立され、「ECSC欧(欧州石炭鉄鋼共同体)」とともに3つの共同体がうまれたが、1967年7月のブリュッセル条約で3つが統合され「EC(欧州諸共同体)」が発足した。


 イギリスはEECへの加盟を希望したが、フランス大統領シャルル・ド・ゴールの反対により阻まれ、EECに対抗するため、非加盟のオーストリア、スウェーデン、スイス、デンマーク、ノルウェー、ポルトガルとの7ヵ国で「EFTA(欧州自由貿易連合)」を結成して対抗していた。

 しかし1973年、ド・ゴールの死去とともにECへの加盟が認められ、イギリスはEFTAから脱退し、デンマーク、アイルランドとともに欧州共同体(EC)に加盟して、ECは第1次拡大が実現して9ヵ国体制となった。さらに1981年にギリシャが加盟、1986年にスペインとポルトガルが加盟し、12ヵ国体制となった。


 1986年ジャック・ドロールが欧州委員会委員長に就任すると、単一欧州議定書が署名され、統合条約以来はじめてとなる基本条約の改定が行なわれた。1989年、ベルリンの壁が崩壊しドイツが再統一を果たすと、1993年11月、欧州連合条約(マーストリヒト条約)が発効して「EU(欧州連合)」が発足し、さらに東欧・北欧の諸国が加盟することになる。

 かくしてEUは、統合一体化と加盟国拡大による多様化の、相互矛盾をはらんだ苦難の道を歩むことになるのだが、そもそも英国は、そのEEC加盟の経緯からしても、独仏伊など欧州大陸の国とは異質なものをはらんでいた。


 英国はヨーロッパの中の一国と見られがちだが、かつては「七つの海を支配した大英帝国」として君臨し、その哲学・思想面でも、イギリス経験論は大陸合理論と対比され、法理論でも大陸自然法に対する実定法主義、伝統的に経験を重視するイギリスに対して、独仏など大陸では理念・理論が先行する。つまりイギリスは、ヨーロッパの異邦人と考えた方が分かりやすい。

 通貨制度においても、イギリスはユーロ(EUR)通貨統合には参加しておらず、スターリング・ポンド(UKポンド)を基本通貨している。伝統の複雑怪奇な通貨単位が、10進法に統一されたのさえ、1970年代になってからである。そのようなイギリス国民にとって、EUの欧州委員会などが、理念・理想に基づいて統合を進めていくのには、大きな違和感を抱いていたわけで、唐突に「EU離脱」にブレたというわけではないのは、理解しておく必要があろう。


◎米大統領選に共和党トランプ選出

*2016.11.8/ 米大統領選で共和党のトランプ候補が当選する。


 2016年アメリカ合衆国大統領選挙は、2016年11月8日にアメリカ合衆国で実施された。民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプとの対決となったが、多くの世論調査や事前予想を覆しドナルド・トランプが勝利した。

 2015年6月16日、トランプは2016年アメリカ合衆国大統領選挙に共和党から出馬することを表明した。この出馬表明の場で、トランプは隣国メキシコからの悪質な不法移民を非難した。ヒスパニック系住民が増大するなかで、ヒスパニック系の動向に敏感なマスコミは、こぞってトランプ発言に反発する動きを示した。


 出馬表明後の12月、ISILの影響下にあるムスリム系夫妻が、カリフォルニア州サンバーナディーノ郡で銃撃テロを起こすと、トランプ候補は、ムスリムの入国を完全に禁止するよう提案し、イスラム世界から大きな反発を受けた。ヒスパニックやムスリム系住民の反発を買うのは、選挙に不利に働くと思われたにもかかわらず、その後もトランプは問題発言を連発した。

 破天荒なトランプ発言だったが、トランプは共和党の指名候補争いでトップ支持率を保ち続け、あわてた従来からの共和党主流派は、トランプの共和党大統領候補を阻止に動く。またトランプ人気が強くなるにつれて、移民に関する発言に反発した黒人やヒスパニック系がトランプの集会を妨害する動きも頻発した。


 またトランプは、民主党候補者へも、口汚い言動を繰り返して攻撃する。ヒラリー・クリントンには、夫の元大統領ビル・クリントンのかつての性スキャンダルまで持ち出して口撃したり、SNSのTwitterで他の民主党候補に挑発を続けたりと、これまでの大統領候補には有り得ない傍若無人の発言で物議を醸した。

 しかし、民主党の各候補がウォール街などから大口の献金を受ける中で、トランプは自己資金だけで選挙戦を闘い、共和党の他候補も含めて、誰よりも少ない資金で指名争いをリードした。一方で、トランプに対するネガティブ広告には多額の費用が投入され、共和党のテレビCMの半数はトランプ降ろしを狙うものだった。


 また欧米メディアは、一様にトランプに否定的な反応を見せ、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどリベラル大手のみならず、エコノミストやフィナンシャル・タイムズなど経済紙までもがトランプ阻止を訴えた。

 このようなメディアの逆風と、少ない選挙資金で闘いながら、トランプが指名争いの首位を保ってきた逆説的な状況については、既存の主流政治家への不満や、支持者の見識不足と結びつける論調が多いが、それだけでは納得できない「トランプ現象」が現出した。


 トランプは、2016年7月の共和党予備選挙で正式に大統領候補に指名された。民主党候補に指名されたヒラリー・クリントンとの、事実上の一騎打ちとなった大統領選は、圧倒的にヒラリー優勢とされたが、2016年11月8日のアメリカ合衆国大統領選挙一般投票では、トランプ候補が、全米で過半数の270人以上の選挙人を獲得し勝利した。

 2017年1月20日、ドナルド・トランプは第45代アメリカ合衆国大統領に就任した。就任時の年齢は70歳220日、歴代最高齢の大統領となったトランプは、就任演説で「アメリカ第一主義(アメリカ・ファースト)」を掲げた。保護主義や孤立主義的な政策で、自国の利益を最優先とする「アメリカ第一主義」に立つトランプの政治姿勢は、「トランピズム ”Trumpism”」と呼ばれている。


 政治経験がまったく無く、日ごろの言動からは金と女にしか興味がないと揶揄されるようなトランプが、あれよあれよという間に大統領になってしまった。その下品な発言からインテリ層からは毛嫌いされ、黒人やヒスパニックなどマイノリティへの差別的な発言から反発を受けるなど、自ら敵を生み出す言動から、トランプが支持される理由を見つけ出すのは困難を極める。

 支持層は、低学歴の労働者など貧困白人層と原理主義的な福音派などのキリスト教派だと言われるが、その心理的構造は必ずしも解明されていない。このようなかつてなかった現象は、アメリカの文化的深層にまで遡行してみないと、明らかにはならないと思われる。

 以前に、アメリカのサブカルチャーから、その辺を探る試みをしたので、ここにリンクしておく。

https://naniuji.hatenablog.com/entry/20170203


(この年の出来事)

*2016.5.9/ 税のがれに利用される国際的金融センターの膨大な取引が記録された「パナマ文書」が、流出し公表される。

*2016.7.26/ 相模原障害者施設で、大量殺人殺傷事件が起きる。

*2016.8.5/ リオデジャネイロオリンピックが開幕する。


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