2022年6月21日火曜日

【歴史コラム】19.「トランプ現象」と「負け犬白人」たち

【19.「トランプ現象」と「負け犬白人」たち】

    (アメリカン・サブカルチャーからその淵源を辿る)

>日本人がまったく知らないアメリカの「負け犬白人」たち
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50253

 「トランプ現象」で世間が騒がしいが、この記事では、その背景になった「負け犬白人」たちをリアルに解説してくれている。「ヒルビリー(Hillbilly)」と呼ばれる白人層で、ほかにも「レッド・ネック(red neck)」とか「ホワイト・トラッシュ(White Trash)」とかさまざまな蔑称で呼ばれている。

 何となくそういうことは聞いていたが、この記事ではアメリカン・サブカルチャーに沿って描いてくれるので、具体的にイメージできる。

 例えば映画やTVドラマでいうと、60年代の『じゃじゃ馬億万長者 ”The Beverly Hillbillies"』、恐怖の対象としての「ヒルビリー」ではジョン・ブアマン監督の映画『脱出』(1972年)、そしてチェーンソーを手にした「恐い白人」が迫ってくるトビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(1974年)と並ぶ。

 コメディからサスペンスホラーまで、様々なタッチで描かれたヒルビリーが、こう並べられると具体的に繋がってイメージされてくる。これらは、白人のなかでもとくに男性を中心に取り上げて、「怒れる白人男性(Angry White Male=AWM)」と呼ばれることもある。

 ポピュラー音楽の分野では、「ヒルビリー」そのものの名が冠せられていた音楽ジャンルがあったのだが、これは今日「カントリー(C&W)」と呼ばれるようになっている。これは例えれば、アメリカ人の「演歌」みたいなものとも言えるかも。

 ロックやフォークのように世界に広がることはないが、アメリカ国内ではそれらを上回る人気がある。日本では国民的歌手というと演歌界から登場するように、アメリカ国民的歌手の大物となれば、カントリー界の歌手になる。

 そのような西部劇やカントリーの世界では、独立独歩の価値観が称揚され、それはいわば「アウトサイダーの論理」でもある。そしてそれは、共和党の中に埋め込まれた価値観でもあり、『ダーティハリー』を演じたクリント・イーストウッドが、一貫した共和党支持者であるというのもすんなりと繋がって来る。

 これらの「負け犬白人」たちは、かつてのヒッピーなどカウンターカルチャーの象徴であったドラッグではなく、いわばアルコールと入れ墨に沈潜するゾンビであった。そのゾンビが、トランプによって目覚めさせられたと考えると、これはかなり恐ろしい事だと言うべきなのかもしれない。

<追記1>
 アメリカン・ニューシネマの代表作『イージーライダー』では、まさに理不尽なラストシーンが描きだされる。主人公の二人のヒッピーが気持ちよくオートバイを走らせるなか、いき違うトラックの田舎の農民が、何の脈絡もなく二人のライダーをライフルで射殺して、映画は終わる。

 この不可解なラストシーンを、”アメリカ”に反発するカウンターカルチャーのヒッピーと、”アメリカ”に置いて行かれる、超保守化というより原始化、野蛮化したヒルビリーとの軋轢と捉えると、あの理不尽な終わり方の意味が分ってくる。そして、実質上”アメリカ”を支配する”ビッグブラザー”は、画面に登場して来ない。そのことが、不気味な将来を予感させて終わる。
 
 ビッグブラザーは顔を見せない。それは当然で、ヒトラーとかいった固有名では示されない集団であり、あえて言うならば「エスタブリッシュメント(Establishment)」という支配層である。

 そして大統領選では、ヒッピーの末裔たちはサンダースを支持し、ヒルビリーはトランプに期待をかけた。そして彼ら双方からは、ヒラリーが、ビッグブラザーの象徴として映ったわけだろう(笑)

<追記2>
 アニメ『ザ・シンプソンズ』--2000年に放送されたシリーズでは、トランプそっくりの大統領を登場させて、トランプ登場を予言したとも言われているらしい。アニメではアメリカの典型的な中産階級の家庭と設定されているが、崩壊した労働者家庭のトンチンカンな様子が風刺的に描かれる。
<追記3>
 ノーベル賞作家ジョン・スタインベック 『怒りの葡萄』では、1930年代の大恐慌の時代、オクラホマ州はじめアメリカ中西部で深刻化した「ダストボウル(大砂嵐)」で、耕作不能となって流民となった農民の、苦難の移住の様子を描く。

 彼らがたどった「ルート66」は、やがて自動車道となり、1960年代のTV映画『ルート66』では、シボレー・コルベットに乗った2人の若者トッドとバズのロードムービーとして登場した。

 そして、ダストボウル時代にカリフォルニアに移住したオーキーの一人、フォークシンガーのウディ・ガスリーを知った。あのボブ・ディランはガスリーの曲を聴いて衝撃を受けたという。
 彼らはカリフォルニアなどの西海岸に至り、小農となったり労働者となったり、そして末裔はヒッピーにもなった。この辺をたどると、「ヒルビリー」と全く対照的な下層白人という姿も見えて来る。彼らはサンダースのような左系民主党を支持したのではないか。

 ビッグブラザーは顔を見せない。それは当然で、ヒトラーとかいった固有名では示されない集団であり、あえて言うならば「エスタブリッシュメント(Establishment)」という支配層である。

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