2021年1月31日日曜日

【21C_h3 2018(h30)年】

【21th Century Chronicle 2018(h30)年】


◎森友学園問題

*2018.3.9/  国会対応や文書管理などの不手際を理由に、問題発生当時の理財局長だった国税庁佐川長官が辞任する。

*2018.3.12/ 財務省が、森友学園問題で決裁文書の改竄を認める。


 2016(h28)年6月、学校法人「森友学園」に大阪府豊中市の国有地が払い下げられたが、当初の不動産鑑定士による土地評価額は9億5,600万円、ところが近畿財務局は「約8億円引き」の1億3,400万円で払い下げた。ところが近畿財務局との交渉時に、森友学園の「籠池泰典」理事長が、安倍首相の昭恵夫人との交流を強調したことなどから、首相夫妻が関与して、不当に安くされたのではないかという疑惑が出された。

 豊中の当該土地は1974(s49)年、伊丹空港(大阪空港)周辺の騒音対策区域に指定され、周辺土地を順次買収して大阪航空局の行政財産となっていた。その後、騒音対策が進み普通財産化されると、近畿財務局の管轄で売却対象となっていた。2011(h23)年には、隣接地にある大阪音楽大学と売買交渉をしたが、入札価格が鑑定価格約9億円に満たず折り合わなかったとされている。

 2013(h25)年6月、国から土地売却の公募が出されると、9月に森友学園から財務省近畿財務局に対し、土地の取得要望書が出され交渉が開始された。2015(h27)年5月、学園と国との間で10年以内の売買契約を前提に定期借地契約が締結され、国の負担で土壌改良及び地中のごみ撤去工事が行われた。2016(h28)年3月、籠池理事長から、新たにさらなるごみが見つかったとしてごみ撤去要請がなされ、さらに24日には学園側から土地売買契約の申込がなされた。

 国側は、ごみ撤去費用を土地代金から値引きして売却することとして、2016(h28)年4月6日、まず既成分ごみ撤去工事費用等として、学園側に1億3,176万円が支払われた。さらに4月14日、新たなごみ撤去費用が約8億2,000万円と報告された。6月17日、「佐川宣寿」が理財局長に就任すると、6月20日、その分を値引きして代金1億3,400万円とする売買契約が締結された。これで学園側の土地代負担は、事実上ゼロとなる。


 土地価格については、豊中市議が近畿財務局に売却価格の開示請求をしたが、近畿財務局は非開示とし、市議はこれを不服として、大阪地方裁判所に提訴していた。2017(h29)年2月9日、朝日新聞が、この非公表の売却価格が、豊中市に売却された隣接国有地の1割程度で、不当に安いと報じた。さらに、学園の理事長籠池泰典は日本会議大阪の役員であり、首相夫人の「安倍昭恵」が同校の名誉校長となっていると報じたため、政治的な「忖度」まで疑われるようになった。

 2017(h29)年2月17日、衆議院予算委員会で、安倍晋三首相は私学設置認可や国有地払い下げに「私や妻が関係していたならば、首相も国会議員も辞める」と述べたため、俄然、野党は安倍政権倒閣の名目として、目の色を変えて追及を始めた。さらに「安倍晋三記念小学校」という名称が予定され、その名目で寄付が募られていたことなども判明する。


  一方で、森友学園が運営する既存の塚本幼稚園では、戦前の愛国主義のような教育が幼い園児に為されていて、しかも「安倍首相頑張れ」などという掛け声を言わせているなどの問題が浮上した。ほかにも籠池夫婦が、地元政界を中心に開校のための政治的工作をしている事実が出てきた上に、大阪府私立学校審議会が審査基準を緩和して森友学園の申請を認可したという事実も判明した。

 2017(h29)年3月23日、参議院予算委員会および衆議院予算委員会で、籠池泰典の証人喚問が行われた。籠池はこの中で、国有地取得については、地元の政官界に働きかけたことを具体的に話し、また首相夫人の安倍昭恵に名誉校長を依頼したりと、極めて近しい関係を臭わせたりと、言及された側が否定に追われるような証言をした。


 2017(h29)年7月31日、経営する既存幼稚園の職員数を水増しして、補助金を不正受給していた容疑で、籠池夫妻が2人共に逮捕される。泰典の妻「籠池諄子」は、もともと学校法人森友学園創立者の長女であって、籠池泰典は諄子と結婚することで学園の理事となっており、夫婦で新規の小学校の設立のために動いていたのだった。

 その後、夫婦二人は300日にわたって勾留されたのちに保釈されるが、その間の2018(h30)年3月2日に朝日新聞が、財務省が作成した当該土地取引に関わる決裁文書が、森友学園問題発覚後に書き換えられた疑いがあると報じた。安倍首相や当時の理財局長佐川宣寿などの国会答弁と整合するように、決裁文書が書き換えられたという疑いである。


 2018(h30)年3月7日には、近畿財務局の男性職員が、決裁文書改ざんを強要されたとのメモを残して自宅で自殺するという事件が起こってしまう。その直後の3月9日、国税庁長官に栄転していた佐川宣寿は、文書管理の不始末を理由に辞任退官、さらに3月12日、財務省が森友学園問題で決裁文書の改竄を認めることとなった。

 結局は当初の、90%にも相当する国有地の不当値引き問題は、不問に付されたまま幕引きされた。本来は、関西のアクの強い学園経営者夫婦が、新規小学校を開設するために、あらゆる手段を使って、用地の入手から認可までを低コストで迅速に進めようと画策した茶番劇であった。そこに、不注意で軽率な言動をした安倍首相夫人昭恵の名前が利用され、首相自身が国会答弁で、自分たちが関わっていれば首相も議員も辞職するなどと答弁したため、俄然マスコミや野党が色めき立って、確実な証拠もなく事を大きくした。


 それに関係して、財務官僚が身内の不手際や首相周辺への「忖度」から、事実をごまかす国会答弁をし、辻褄合わせに決裁文書の改竄までした。挙句の果てに、改竄を強要された下級職員の自殺まで引き起こし、口封じの為に籠池夫婦を、別件の補助金不正受給容疑で、通常有り得ないような300日間の長期拘留を続けた。

 関西ローカルのちょいと押しの強い幼稚園経営者夫妻に、安倍政権・中央官庁さらには野党・大手マスコミまでもが巻き込まれた茶番劇で、1年以上もの間、国会が空転状態になったことの責任は、誰も取らない。


◎初の米朝首脳会談

*2018.6.12/ 史上初の米朝首脳会談が、シンガポールで行われる。


 2018年6月12日、シンガポールで、米朝首脳会談が開催された。韓国の文在寅大統領が仲介する形で、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長の両首脳による、初の直接会談が行われた。

 対北朝鮮融和派の文大統領は、この4月に板門店の韓国側「平和の家」で南北首脳会談を実現しており、米と北朝鮮を結び付けられる唯一の存在を誇りたいが、実際の会談を何時、何處で開催するかなどは、米朝双方の思惑で水面下で直接交渉され、トランプも止めると言ったりやると言ったり、駆け引きを弄しながら、北の金正恩に、どうしても会談を実現したいという意向を示させて、やっと会談にこぎつけた。


  両者の会談後、形ばかりの共同声明が発表された。それには下記のような宣言があった。

(1)アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、平和と繁栄を求める両国国民の希望に基づき、新たな米朝関係の構築に取り組む。

(2)アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、協力する。

(3)2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。


 つまりは努力目標を掲げただけで、何一つ合意が無かったことがわかる。トランプは、金正恩が核の完全放棄を確約しなければ、何一つ譲る気はなく、また金は国連制裁決議の解除が欲しいが、いのち綱である核放棄には踏み込めず、結局はもの別れに終わるのが必至の茶番会談でしかなかった。

 2019年2月2には、ベトナムのハノイにおいて2回目の米朝首脳会談が開催されたが、これはトランプが途中で席を立つようにして、もの別れに終わり、共同声明さえ発表されなかった。これによって、両国間の非核化に向けた動きは完全にストップした形になった。


 ところが2019年6月29日にG20大阪サミットに出席していたトランプは、突然ツイッターで金正恩と板門店で会うことを提案し、その後訪問した韓国でも、ここまできたついでに会ってみようかなどと発言して、まわりを戸惑わせた。

 結局、南北非武装地帯に位置する国連軍基地の訪問と軍事境界線への視察を名目に、板門店でトランプと金が面会が実現する。その際にトランプは軍事境界線のブロックを超え、現職のアメリカ合衆国大統領として初めて北朝鮮に入国した形となった。


 その後、米朝両首脳は韓国側に入り、文在寅大統領と合流、史上初めてアメリカ合衆国・韓国・北朝鮮の3首脳が一同に会するという演出がなされた。文在寅の参加はアメリカ側が拒否したのに、強引に割って入ったとされている。この会談は、米朝ともに首脳会談としては認めておらず、ほとんど中身のある話し合いは為されなかった。

 その後、米朝交渉は途絶えたままで、具体的な変化は見られないままに、世界的な新型コロナ感染症のパンデミックが世界的を被いつくし、その中で、圧倒的に優位に立っていたはずトランプの雲行きがおかしくなった状況で、アメリカ大統領選が行われるさ中では、もはや米朝関係など、だれも関心が持てない状況となっている。


◎日産 ゴーン会長逮捕

*2018.11.19/ 日産のゴーン会長が、金融商品取引法違反容疑で逮捕される。


 2018(h30)年11月19日、日産の代表取締役会長「カルロス・ゴーン」が、役員報酬額を、実際の報酬額よりも少ない額で有価証券報告書に記載していたとして、東京地検特捜部により金融商品取引法違反容疑で、腹心の代表取締役グレッグ・ケリーとともに逮捕された。自家用ビジネスジェットで羽田空港に着陸したタイミングで、特捜部の捜査員に逮捕された形となった。

 2018(h30)年11月22日、日産の取締役会において日産の会長職と代表取締役から解任され、2018(h30)年12月、東京地検はカルロス・ゴーンを金融商品取引法違反で起訴、さらに翌2019(h31)年1月に特別背任罪で追起訴した。さらに、フランスのルノー本社でも、ルノーの資金を不正に使った疑いがあると報道され、事件はルノーにも飛び火した。


 2019(h31)年3月5日、ゴーンは保釈を許可されるが、その後の日産やルノーの内部調査で、数多くの不正が発覚し、同年4月4日、日産の資金の一部を不正に流用した疑いにより、東京地検特捜部は特別背任の容疑で都合4度目の逮捕をした。

 前回の拘留が海外では異例とされる数ヵ月におよび、海外から「人質司法」などという批判もあったため、今回は4月25日に再保釈されるが、ゴーンは一貫して無罪の主張を続けていた。そして公判前整理手続きが進められており、マスコミ報道が沈静化しているところで、2019(r1)年12月、保釈中のゴーンは日本を密かに出国し、レバノンの首都ベイルートへ逃亡した。


 カルロス・ゴーンは1954(s29)年3月、ブラジルで生まれたが、6歳の時、レバノン人である母や姉妹とともに、祖父の母国であるレバノン・ベイルートに転居した。ベイルートで中等教育を受けたあと、フランスのパリで、リセ(高校)を経てエコール・ポリテクニーク(理系エリート養成校)を卒業し、工学博士号を取得している。

 1978(s53)年に欧州最大のタイヤメーカー「ミシュラン」に入社、30歳の時に南米ミシュランの最高執行責任者(COO)に任命され、さらにキャリアを積み上げて、1990(h2)年にミシュラン北米の最高経営責任者(CEO)に昇格する。そしてその経営手腕を買われて、1996(h8)年に、ルノーの上席副社長にヘッドハンティングされた。


 それらの経歴から、ゴーンは、ブラジル、フランス、レバノンの3ヵ国の国籍を持ち、アラビア語、フランス語、英語、スペイン語、ポルトガル語の5言語を流暢に話すという。そして、1999年にルノーと日産の資本提携が行われると、ルノーでの役職を維持したまま日産の最高執行責任者(COO)に就任し、家族とともに日本に移り住んだ。

 当時の日産は約2兆円(200億ドル)の有利子負債を抱え、国内販売でラインナップされた46モデル中、3モデルだけが利益をあげているという状況であり、ルノーからの巨額な資金投入が行われた上で、その立て直しにゴーンが乗り込んできたのだった。


 ルノー本社などでの業績から「コストカッター」の異名をもつカルロス・ゴーンは、「日産リバイバルプラン」の下、それまでの日本の企業文化では不可能だった大幅なコストカットやリストラを実行、その一方で、新車種の投入やブランドイメージの一新などの計画を次々に敢行し、製品開発力を低下させずに、たった1年で日産のV字回復を成し遂げた。

 さらに2016(h28)年10月、燃費データ改竄などの不祥事で瀕死の状態だった三菱自動車工業をも傘下に加え、ゴーンはルノーおよび日産における地位に加え、三菱の会長にも就任した。このルノー・日産・三菱の提携による自動車グループは、トヨタ自動車、フォルクスワーゲン、ゼネラルモーターズに続く世界第4位の地位を確立した。


  かくして順風満帆の経営者として、ビジネス界のヒーローとなったカルロス・ゴーンだったが、たった1年余りの間に4回も逮捕され、ルノー・日産・三菱自動車のすべての要職から離れ、最後には逃亡者となってしまう。経営成果を上げるにつれて、ゴーンに権力が集中し、周囲に制御できるものが居なくなって、それがゴーンの暴走を許すことになったのであると想像される。


(この年の出来事)

*2018.7.7/ 点滴異物混入中毒死事件で元看護師の女が殺人容疑で逮捕される。

*2018.8.12/ 大阪の富田林警察署から、強制性交、強盗致傷などで留置中の容疑者が逃走する。

*2018.10.6/ 東京都中央区の築地市場が83年の歴史に幕を下ろす。


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