2021年1月1日金曜日

【20C_s6 1988(s63)年】

【20th Century Chronicle 1988(s63)年】


◎青函トンネル・本四連絡瀬戸大橋 開業

*1988.3.13/ 世界最長の青函トンネル(53.85km)が開業する。

*1988.4.10/ 本州と四国を結ぶ瀬戸大橋(児島ー坂出ルート)が開通する。


 青函トンネルは、津軽海峡の海底下約100mの地中を穿って設けられたJR北海道の鉄道トンネルで、全長は53.85 km。交通機関用のトンネルとしては世界一の長さである。

 1954(s29)年9月26日、台風第15号が襲うなかで青函連絡船 洞爺丸が沈没、1,155人に及ぶ犠牲者を出し、日本海難史上最大の惨事となった。この事故を契機に、青函トンネル建設計画が本格的に浮上した。やがて、1961(s36)年に建設開始、1985(s60)年本坑全貫通、1987(s62)年11月青函トンネル完成、そして1988(s63)年3月13日、鉄道の供用が開始され、それに伴い青函連絡船は廃止された。


 一方、瀬戸大橋は、瀬戸内海をまたいで本州(岡山県倉敷市)と四国(香川県坂出市)を結ぶ10の橋の総称で、本州四国連絡橋のひとつ。1988(s63)年4月10日、3つある本四連絡橋のうちで、この児島・坂出ルートが、神戸・鳴門ルート、尾道・今治ルートよりも10年先行して開通した。瀬戸大橋は、鉄道道路併用橋としてJR線が通り、並行していた宇高連絡船はまもなく廃止された。


 これらのトンネルや橋で、日本の四つの本島、本州・北海道・九州・四国は陸上交通でむすばれることになり、交通の利便性は格段に高まった。しかしながら、それが両側に同等の経済効果をもたらすわけではない。水が低きに流れるように、大都市圏の吸引力により、人や物が一方向に引き寄せられてゆくことが多い。つまり過疎な地区はより過疎になり、地方経済が大都市圏経済に吸収されてゆくという流れが加速する。交通を良くする場合、ローカルな方面にも大都会に匹敵する魅力を創り出す必要がある。


◎なだしお事件

*1988.7.23/ 東京湾で、自衛隊潜水艦「なだしお」と釣り船「第一富士丸」が衝突、釣り客ら30人が死亡する。


 1988(s63)年7月23日横須賀港沖で、海上自衛隊潜水艦「なだしお」(乗員74名)と遊漁船「第一富士丸」(定員44名)が衝突し、第一富士丸が沈没。第一富士丸の乗客・乗員30名が死亡、17名が重軽傷を負った。なだしお側の救助の遅れ、事故報告の遅延、記録の改ざんなどが批判されたが嫌疑不十分で不起訴とされた。


 海難審判では、双方「同等の過失」とされた。一方、刑事裁判では、なだしお側に主因があると認定したが、第一富士丸側にも過失を認め、双方の責任者に執行猶予つきの有罪判決が下された。海難審判で同等過失とされた第一富士丸船長は、処分取り消しの行政訴訟を起こすも東京高裁に却下されたが、事故の主因はなだしお側にあったと認定した。


◎第24回オリンピック大会(ソウルオリンピック)

*1988.9.17/ 韓国ソウルで第24回オリンピック大会が開催される。


 第24回夏季オリンピックは、1988年9月17日〜10月2日の間、韓国の首都ソウルで開催された。前回のロサンゼルスオリンピックでは東側諸国が、前々回のモスクワオリンピックでは西側諸国がボイコット、その前のモントリオールオリンピックでは多くのアフリカ諸国が不参加だったため、16年ぶりにほぼすべての国が揃う大会となった。また、1964年東京オリンピックに続き、アジアにおける2度目の夏季オリンピックでもある。


 陸上競技男子100mでは、前回の4冠カール・ルイス(米)がベン・ジョンソン(カナダ)に敗れるという番狂わせがあった。しかし、競技後の検査でドーピングが判明し失格、カール・ルイスの優勝となった。女子100m、200m、400mRで金メダルを獲り3冠を達成したフローレンス・グリフィス=ジョイナーは、鮮やかなマニキュアに長い髪など、ファッションを陸上競技にもち込んだアスリートとしても騒がれた。しかし早くから薬物疑惑がささやかれ、五輪直後に29歳という若さで引退した。のち38歳で心臓発作で死亡したときにも、薬物の副作用がささやかれたが事実は不明。

 日本選手では、柔道最重量級で前回の山下に続いて斉藤仁が金メダル、脅威のドルフィンキック・スタートで競泳100m背泳ぎ優勝をはたした鈴木大地らが話題になった。ほかに、シンクロナイズドスイミンの小谷実可子や体操男子の池谷幸雄が銅メダル取るなどの活躍をした。


 開会式では、聖火台に点火された瞬間に数羽の鳩が焼け落ちるというアクシデントがあった。これは点灯より前に鳩を放つというミスのせいとされるが、この以降、開会式で鳩が飛ばされるシーンは無くなった。また、ボクシングや柔道では不可解な判定があいつぎ、審判員の買収なども露呈した。テレビ放映権の影響で、アメリカ東部のプライムタイムに合わせて、本来、午後から夕方に掛けて行われる陸上競技の多くの決勝が、午前中に行われるなど、多額の放映権料の見返り実施で競技自体が軽んじられる問題が生じた。


◎リクルート事件

*1988.11.21/ 衆議院リクルート問題調査特別委員会が証人3人を喚問する。


 1988(s63)年、リクルートの関連会社リクルート・コスモス社の未公開株が、賄賂として譲渡されたとして。贈賄側のリクルート社関係者と、収賄側の政治家や官僚らが逮捕され、大スキャンダルとなった。1984(s59)年から1985(s60)年にかけて、リクルート社会長江副浩正が、有力政治家、官僚、通信業界有力者らに、リクルート社の子会社であるリクルート・コスモス社の未公開株を譲渡したとされる。


 名前の出た大物政治家は、中曽根康弘前首相、竹下登首相、宮沢喜一副総理・蔵相、安倍晋太郎自民党幹事長、渡辺美智雄自民党政調会長ら、自民党派閥領袖クラスが含まれ、森喜朗は約1億円の売却益を得ていたとされる。その多くは「秘書がやったこと」と釈明し、立件を免れた。また学界関係者では、政府税制調査会特別委員を務めていた公文俊平、経済界では、真藤恒NTT会長や森田康日本経済新聞社社長もその職を辞任した。


 90人を超える政治家や官僚がこの株の譲渡を受けたとされ、これだけ広範囲にわたる贈収賄疑獄事件はまれにみるものであった。時の竹下登首相は内閣改造するも維持し切れず、翌年6月には内閣総辞職する。次期首相候補とされた大物政治家も軒並み名を連ねたため、その後弱体政権が続くとともに、自民党のダメージも大きく、のちには社会党を含む様々な組み合せの連立政権をやむなくされた。


(この年の出来事)

*1988.2.6/ 衆議院予算委員会で、浜田幸一委員長が「共産党の宮本議長は殺人者」などと発言し議場が混乱、12日、浜田委員長は辞任する。

*1988.9.5/ プロ野球南海ホークスがダイエーへの球団譲渡を発表。10.19には、阪急ブレーブスもオリエント・リースへの身売りを発表する。

*1988.9.15/ 天皇が吐血、以後重体が続き、全国に自粛ムードが広まる。


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