【20th Century Chronicle 1908(m41)年】
◎中東で大油田発見
*1908.5.26/ 中東のペルシア砂漠で「夢の大油田」発見される。英国政府の後押しで、銀行家ダーシーと技術師レイノルズの快挙だった。
イラン南西部の砂漠地帯から、大油田が発見された。鉱掘家ウィリアム・ノックス・ダーシーは、英国の先兵として、イラン・カージャール朝から石油採掘権を取得し、苦難の末、中東でも最大級の油田の発掘に成功した。アングロ・ペルシア石油会社が設立されて,この事業を引継ぎ、後に中東石油を支配したセブンシスターズの一つ、ブリティッシュ・ペトロリアムの前身となった。
この時期、中東に石油の莫大な埋蔵量があることが判明してきており、それまでただの砂漠の地であった中東が、列強の注目を浴びることとなる。大英帝国海軍でも、全軍艦の燃料を石炭から石油に切換えを図っており、自動車も普及期に差し掛かるなど、石油が一躍、重要エネルギーとして脚光を浴びた。
アメリカではゼネラル・モーターズ(GM)が設立され、一方フォード社では、本格的普及車として名声を馳せた「T型フォード」を発売するなど、本格的なモータリゼーションが始まった。ライト兄弟による有人飛行に成功したばかりの飛行機も、第1次、第2次世界大戦を経て、爆発的に進化してゆく。
当時、中東一帯を支配下に置いていた老大国オスマン・トルコ帝国は、石油利権を目指す列強に浸食され続けていたが、第1次大戦に参戦して戦敗国となると、一気に分割が進むことになる。現在の中東の混乱は、石油の発見とともに始まったと言える。
◎「フォードT型」発売
*1908.10.1/ 「フォードT型」発売。堅牢、操作性にすぐれ、しかも850ドルの低価格で、自動車時代の幕を開く。
この9月にはゼネラル・モーターズ社が設立され、持株会社によるトラストとして、ビュイック社、キャデラック社などを次々と統合して、全米最大の自動車メーカーとなってゆく。一方の雄フォード社は買収を免れ、T型フォードを発売し大衆車の世界を開いていった。
フォード社はやがて、「フォードシステム」と呼ばれる大量生産方式を確立し、実用的かつ廉価なT型フォードの普及に努めた。T型フォードは、以後19年間もモデルチェンジをせず、この間実に1500万台を生産、当初価格850ドルを290ドルまで低下させたという。
◎泉鏡花「婦系図」
*1908.10.-/ 東京の新富座で、泉鏡花の「婦系図」が初演さる。「別れろ、切れろは 芸者のときにいう言葉」
1897年尾崎紅葉「金色夜叉(こんじきやしゃ)」、1898年徳冨蘆花「不如帰(ほととぎす)」、1907年泉鏡花「婦系図(おんなけいず)」と、明治期を代表する恋愛物語が発表され、美文や伝統的技法を踏まえた大仕掛けな話が評判を呼んだ。これらは必ず、舞台や映画に適した名シーンがあり、小説以外でも人口に膾炙することになった。
しかし、西欧の自然主義文学などが紹介され、鴎外、漱石など近代文学の洗礼を受けた作家が登場すると、これらは古臭い世界を背負った作品として、忘れられてゆく。お宮寛一・武雄と浪子・お蔦主税と、その登場人物は有名だが、その物語を詳しく知る者は少ないと思われる。
(この年の出来事)
*1908.4.28/ 初のブラジル移民船「笠戸丸」が神戸港を出発する。
*1908.7.13/英国 第4回オリンピック・ロンドン大会開幕。水泳競技も初登場。
*1908.11.15/中国 清の独裁者、女帝西太后が死去。死の直前、3歳の溥儀を皇位に就ける。
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